明 細 書
医療用縫合針の曲げ加工方法及び医療用縫合針
技術分野
[0001] 本発明は、胴部から針先にかけて太みが小さくなり且つ湾曲させた医療用縫合針 であって、胴部の軸心の曲率と、胴部から針先にかけて太みが小さくなる部分の太み の中心の曲率を可及的に近似させるようにした曲げ加工方法と、医療用縫合針とに 関するものである。
背景技術
[0002] 医療用縫合針には適用部位に対応させて各種の形状 (例えば直針、湾曲針)ゃ寸 法を持ったものが提供されている。その中で、湾曲針は、予め設定された角度と半径 とを持って湾曲して形成されており、断面が円形の丸針、或いは断面が多角形の角 針が提供されている。
[0003] 医療用縫合針は、持針器によって把持される胴部と、生体組織を刺通するための 鋭い針先と、胴部から針先にかけて太みが小さくなる針先部と、を有しており、胴部は 安定して持針器によって把持し得るように断面が扁平状に形成されるのが一般的で ある。
[0004] 医療用縫合針を曲げ加工する方法は、例えば特許文献 1に記載されるように、医療 用縫合針の湾曲形状を規定する円筒状の巻込ロールと、この巻込ロールに圧接する 補助ロールと、巻込ロールと補助ロールとの間に配置された金属ベルトとを有する曲 げ加工装置を用い、巻込ロールと金属ベルトとの間に直針状の素材を揷入して巻込 ロールを時計方向に所定角度回転させることで、揷入された直針状の素材を曲げカロ ェすることが可能である。その後、巻込ロールを反時計方向に回転させることで、湾 曲した医療用縫合針を取り出すことが可能である。
[0005] また例えば特許文献 2に記載された曲げ加工方法は、断面が三角形の医療用刃 付縫合針を曲げ加工する際に好ましく利用されるものである。この曲げ加工方法では 、三角形を構成する一つの面に弾性部材を貼着し、該面を円筒状の曲げコマに接触 させるように配置して曲げコマとベルトとの間に挿入している。
[0006] 各特許文献 1、 2に記載された技術では、直針状の素材は外周面の一部或いは一 つの面が円筒状の巻込ロール或いは曲げコマの表面と接触し、この状態で対向する 側からベルトによる押圧を受けて曲げ加工がなされる。即ち、医療用縫合針の曲げ 形状は巻込ロール或いは曲げコマの外径によって規定されてレ、る。
[0007] しかし、上記した医療用縫合針の曲げ形状は巻込ロール或いは曲げコマの外径に よって規定される、とは巻込ロール或いは曲げコマの外径と医療用縫合針の湾曲内 面の直径とが同一であるという意味ではなぐ医療用縫合針の素材に生じるスプリン グバックにより、医療用縫合針の湾曲内面の直径の方力 巻込ロール或いは曲げコ マの外径よりも大きくなるのが一般的である。
[0008] 特許文献 1 :特公平 07— 004388号公報
特許文献 2:特許第 2849143号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0009] 通常、縫合針の針先より 2/3程度の部分を持針器で把持して縫合するが、上記し た湾曲した医療用縫合針を用いて生体組織を縫合する際に、針先を生体組織に刺 通し難!/ヽとレ、う問題と、針先を刺通した直後の抵抗が大きレヽとレ、う問題が提起されて いる。この問題は熟練した医師ほど大きく感じるようであり、縫合時に一様な刺通抵抗 を有する湾曲した医療用縫合針の開発が望まれているのが実状である。
[0010] 本発明の目的は、上記要求を満足させることができる医療用縫合針の曲げ加工方 法と、医療用縫合針を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0011] 本件発明者は、上記要求を満足させるために種々の調査や実験を行った。この結 果、幾つかの知見を得て本件発明をなすに至ったものである。
[0012] 上記したように、湾曲した医療用縫合針は円筒状の曲げローラーの表面に沿った 湾曲形状を有する。従って、略同じ太みを持った胴部は、軸心が曲げローラーの半 径に胴部の太みの半分を加えた寸法を半径として略一様に湾曲する。即ち、胴部の 曲率は略同じになる。
[0013] しかし、胴部から針先にかけての針先部では太みが小さくなることから、該針先部の
太みの 1/2の寸法に対応する線を仮想軸心としたとき、この仮想軸心の曲率は同じ ではなぐ胴部から針先にかけて連続的に大きくなる。即ち、針先が一様に湾曲した 胴部の軸心の延長線(同一半径の円弧上)よりも内側(円弧の中心側)に位置するこ とになる。
[0014] 生体組織を刺通する際の医師の運針は胴部の湾曲に沿って行われる。このため、 針先を含む針先部から胴部にかけての微妙な曲率の違いから、針先が生体組織を 刺通した初期の状態から胴部が通過するまでの間に針先を含む針先部に橈みが生 じることとなり、医師は、針先が生体組織を通過する際の刺通抵抗に針先部を撓ませ る力を加えた力が必要となる。
[0015] 従って、少なくとも針先が湾曲した胴部の軸心の延長線に可及的に接近した位置 にあれば生体組織に対する刺通時に生じる抵抗を小さくすることができる。
[0016] このため、本発明に係る医療用縫合針の曲げ加工方法は、胴部から針先にかけて 太みが小さくなる直針状の素材を加工面を有するローラーとベルトの間に挿入して口 一ラーを回転させると共にベルトを巻き付けて前記直針状の素材を加工面に押圧し て湾曲させる医療用縫合針の曲げ加工方法に於いて、ベルトとローラーの加工面と を離隔させる離隔手段を設け、前記離隔手段によって離隔したローラーの加工面と ベルトとの間に直針状の素材の針先を揷入してローラーを回転させると共に該ローラ 一にベルトを巻き付けて直針状の素材を湾曲させることを特徴とするものである。
[0017] また医療用縫合針は、胴部から針先にかけて太みが小さくなる直針状の素材を加 工面を有するローラーとベルトの間に挿入してローラーを回転させると共にベルトを 巻き付けて前記直針状の素材を加工面に押圧して湾曲させた医療用縫合針であつ て、針先を含む先端側の一部がローラーの加工面に拘束されることのない非拘束部 として形成され、且つ前記非拘束部を除く部分がローラーの加工面に沿った曲げカロ ェが施された湾曲部として形成されているものである。
発明の効果
[0018] 上記医療用縫合針 (以下「縫合針」という)の曲げ加工方法では、離隔手段によって ベルトとローラーの加工面とが離隔しているため、この状態でベルトとローラーとの間 に素材を揷入しても、揷入された素材の針先は離隔手段によるベルトとローラーとの
間隙に位置し、ベルトによってローラーの加工面に押圧されることがない。
[0019] 即ち、針先を含み離隔手段によるベルトとローラーとの離隔寸法に対応した太みを 有する部分 (針先部)は、ベルトによってローラーの加工面側に付勢されるものの、該 加工面に強固に押圧されることはない。このため、前記針先部はベルトのみによって 曲げ加工が行われることとなり、ローラーの加工面によって規定されることがない。
[0020] 従って、曲げ加工された後の針先は、ローラーの外径に対応した位置よりも胴部の 軸心の延長線に接近した位置となる。即ち、針先を湾曲した胴部の軸心の延長線に 可及的に接近させることができる。
[0021] また本発明の縫合針では、針先を含む先端側の一部がローラーの加工面に拘束さ れることのない非拘束部として形成されるため、針先を可及的に湾曲した胴部の軸心 の延長線に接近させることができる。このため、医師が生体組織を縫合する際に胴部 の湾曲に沿って運針しても、非拘束部を含む針先部を撓ませることがなぐ従って、 抵抗を小さくすることができる。
図面の簡単な説明
[0022] [図 1]直針状の素材と、湾曲した縫合針を説明する図である。
[図 2]曲げ加工を実施している状態を説明する図である。
[図 3]本発明の曲げ加工方法を実施するのに好適な曲げ加工装置の例を説明する 図 である。
符号の説明
[0023] A 素材
B 縫合針
胴部
la 軸心
2 針先
3 針先部
3a 軸線
11 ローラー
11a 加工面
12 ベノレ卜
13 付勢ローラー
14、 15 ベルトプール
16、 19 テンションプーリ
17 ニップローラー
18 ガイドローラー
21 離隔部材
22 空間
発明を実施するための最良の形態
[0024] 以下、本発明の縫合針の曲げ加工方法の最も好ましい形態について、及び本発明 の縫合針の最も好ましい形態について説明する。
[0025] 本発明の縫合針の曲げ加工方法は、胴部から針先にかけて太みが小さくなるよう に形成された直針状の素材を、離隔手段によって離隔したローラーとベルトとの間に 揷入し、ローラーを所定角度往復回転させると共にベルトをローラー側に圧接させる ことで、針先を含む所定長さ部分 (針先部)をローラーに圧接させることなぐ針先部 を除く部位をローラーに巻き付けて曲げ加工するものである。
[0026] 本発明の曲げ加工方法に於いて、この曲げ加工方法を実施するには、ローラーと、 このローラーに巻き付くベルトと、ベルトをローラー側に付勢する付勢ローラーと、を 有する従来より用いられている曲げ加工装置を用いることが可能である。この曲げカロ ェ装置では、 目的の縫合針の仕様に応じてローラーの外径を選択することで、種々 の湾曲形状を持った縫合針を曲げ加工することが可能である。即ち、 目的の縫合針 の湾曲形状と、素材の材質に応じて生じるスプリングバックを考慮してローラーを選 択することで、最適な曲げ加工を行うことが可能である。
[0027] 離隔手段はローラーとベルトの間に設けられ、両者を直接接触させることなく離隔さ せておくことで、曲げ力が作用することのない空間を構成するものである。従って、離 隔手段によって離隔しているベルトとローラーの間に直針状の素材を揷入したとき、
該素材の離隔手段よりも太みの小さレ、部位 (針先を含む該針先側の一部)は前記空 間内に存在することとなり、ベルトから曲げ力が付与されることがなぐ曲がりが生じる ことがない。
[0028] ローラーの回転が進行したとき、素材の離隔手段よりも太みの大きい部位 (胴部及 び針先部の一部)は、離隔手段の存在にも関わらずベルトによってローラーの加工 面に押圧され、素材はローラーの加工面に拘束された湾曲形状に曲げ加工される。 従って、離隔手段よりも太みが大きく且つ一様な太みを有する胴部は一様な曲率で 曲げ加工がなされることになる。
[0029] またローラーの回転に応じた胴部及び針先部の一部の曲げ加工の進行に伴って、 離隔手段によって離隔しているベルトとローラーの加工面との間にある針先を含む針 先側の一部は接線方向に存在することとなり、離隔手段によって構成された空間から ベルト側に突出する。しかし、ベルトが離隔手段に圧接されることから、相対的に針先 側にはベルトによる曲げ力が作用し、針先を含む針先側の一部はローラーの加工面 に拘束されることなぐ単にベルトのみに拘束されて曲げ加工がなされる。
[0030] 従って、離隔手段よりも太みが小さい部分であっても全く曲げ加工がなされないと いうものではなぐ曲げ加工がローラーの加工面によって拘束されることないため、針 先から胴部までの針先部に於ける太みの中心を想定した軸線の円弧力 S、湾曲した胴 部の軸心の円弧に近似させることが可能となる。
[0031] 本発明に於いて、離隔手段は、ベルトをローラーの加工面から離隔させる機能を有 するものであり、この機能を有するものであれば利用することが可能である。このよう な離隔手段としては、ベルトのローラーの加工面と対向する面に貼り付けた帯状の部 材によって構成することが可能であり、またローラーの外周面に巻き付けた帯状の部 材によって構成することも可能である。更に、ローラーの外周面に環状の溝を形成し 、この溝の底面を加工面として構成することも可能である。尚、ローラー 11でなぐ付 勢ローラー 13に溝を形成するか、両方のローラーに溝を形成する構成としても、ベル ト 12が溝に入って橈み、針先を拘束しないため、同等の効果を得ることができる。
[0032] 離隔手段としては、上記したようにローラー或いはベルトを特殊加工する以外にも、 針先部分に被せるパイプによって、或いは針先部分を被覆する厚めのコーティング
層によって構成することも可能である。これらのパイプやコーティング層は曲げカロェ 後、容易に取り外し、或いは剥離させることが可能であることが好ましい。従って、離 隔手段は幾つかの構造の中から適宜選択して採用することが好ましい。
[0033] 離隔手段によるベルトとローラーの加工面との離隔距離 (離隔手段の高さ)は、縫合 針の太みに応じて適宜設定されるべきであり、一義的に設定し得るものではない。特 に、離隔手段の高さは、縫合針が丸針であるか多角形針であるかによって、また例え ば縫合針が三角針である場合には三角形の底面を湾曲の内側にするか或いは峰を 湾曲の内側にするかによつて、適宜選択することが好ましい。
[0034] 本件発明者の知見では、三角針で底面をローラーの加工面に接触させて曲げカロ ェする場合、離隔手段の高さを胴部の太みの約半分程度に設定することで、針先の 位置を湾曲した胴部の軸針の延長線に対し好ましい状態で接近させることが可能で あった。
[0035] 離隔手段は直針状の素材の略全長にわたって配置する必要はなぐ針先を含む針 先側の一部に対応して配置されていれば良い。しかし、離隔手段を部分的に配置し た場合、素材を揷入すべき位置が決まってしまうため、作業の効率を考慮すると好ま しくはない。このため、離隔手段をベルト側に配置する場合には該ベルトの全長にわ たって、またローラー側に配置する場合には該ローラーの外周面の全周にわたって 配置しておくことが好ましい。
[0036] 本発明の縫合針は、本発明の曲げ加工方法を実施して得られるものであり、針先を 含む針先側の一部がローラーの加工面に拘束されることなく加工され、針先側の一 部を除く部分がローラーの加工面に拘束された曲げ加工がなされたものである。
[0037] 本発明の縫合針では、針先を含む針先側の一部はローラーの加工面に拘束される ことなく曲げ加工がなされるので、この部分の太みの中心を想定した軸線の湾曲形 状は、加工面の半径に対応した形状を有するものではなぐ加工面の半径よりも大き い半径を有し且つローラーの加工面に拘束されて曲げ加工された胴部の湾曲形状 に近似している。
[0038] 本発明の縫合針に於いて、該縫合針の断面形状や寸法は限定するものではなぐ 丸針や三角針を含む多角形針等であって湾曲形状を持った縫合針を対象としてい
[0039] また本発明では縫合針の材質を限定するものではなぐオーステナイト系ステンレ ス鋼ゃマルテンサイト系ステンレス鋼、或いはピアノ線に代表される鋼等を選択的に 採用することが可能である。しかし、鯖の問題や生体組織に対する適合性を考慮した とき、オーステナイト系ステンレス鋼の線材を冷間線引き加工して組織をファイバー状 に伸長させた材料を用いることが好ましい。この材料は、冷間加工に伴って硬化し、 且つ高い曲げ強度を有する。
実施例
[0040] 次に、本実施例に係る縫合針の曲げ加工方法と、縫合針について図を用いて説明 する。図 1は直針状の素材と、湾曲した縫合針を説明する図である。図 2は曲げカロェ を実施している状態を説明する図である。図 3は本発明の曲げ加工方法を実施する のに好適な曲げ加工装置の例を説明する図である。
[0041] 先ず、図 1 (a)により直針状の素材 Aについて説明する。図に示す素材 Aは切刃を 有する三角針の素材として構成されており、一様な太みを持った胴部 1と、生体組織 を刺通するのに適した鋭い先端からなる針先 2と、断面が三角形で胴部 1から針先 2 にかけて太みが小さくなる針先部 3を有して構成されている。
[0042] 針先部 3の長さは、縫合針の形状や機能に応じて適宜設定されており、刃付三角 針の場合には胴部の太みの約 3倍〜 5倍程度の範囲に設定されている。また、例え ば針先部 3の断面が円形の丸針の場合には、針先部 3の長さは胴部 1の太みの約 1 0倍〜 15倍程度の範囲に設定されている。
[0043] 素材 Aの針先部 3は、胴部 1の外周の延長線に一致した平面 4と、この平面 4の先 端部分に向けて傾斜した峰 5と、を有して構成されており、平面 4の幅方向の両側に 生体組織を切開する切刃が形成され、峰 5は切開機能を有することのない稜線として 形成されている。このため、針先 2は胴部 1の軸針 laの延長線上にはなぐ平面 4の 先端に位置している。
[0044] 上記素材 Aでは、胴部 1の軸心 laは直線として構成されており、針先部 3の太みの 中心を連続させて想定した針先部 3の軸線 3aは、胴部 1と針先部 3との境界に対応 する位置で軸心 1 aに対し交叉して!/、る。
[0045] 次に、図 3により曲げ加工装置の例について説明する。図に於いて、ローラー 11は 予め縫合針の湾曲形状に対応させた外径を有している。従って、ローラー 11の外周 面が加工面 11aとして構成されている。このローラー 11には後述する離隔部材 21を 介してベルト 12が巻き付けられており、付勢ローラー 13によってローラー 11側に付 勢されている。
[0046] ベルト 12は長尺状に構成されており、未使用のベルト 12はベルトプール 14から供 給されている。ベルト 12は付勢ローラー 13によってローラー 11側に付勢されて素材 Aに対する曲げ加工を行うため、一度曲げ加工を行ったベルト 12には素材 Aの形状 に対応した変形が生じ、再使用することが不可能となる。このため、使用後のベルト 1 2はベルトプール 15に巻き取られるように構成されて!/、る。
[0047] ベノレト 12にはべノレトフ。一ノレ 14力、らローラー 11、 13に至る経路で、テンションプーリ 16によって張力が付与され、一対のニップローラー 17に挟まれてローラー 11に接近 し或いは離隔する方向に移動し得るように構成されている。またローラー 11、 13から ベルトプール 15に至る経路でガイドローラー 18によって経路が規定され、テンション プーリ 19によって張力が付与されている。
[0048] ローラー 11及びローラー 13は同期して矢印 a方向、及び矢印 b方向に回転するよう に制御され、更に、ニップローラー 17もローラー 11の矢印 a方向への回転に伴うベル ト 12の弛みを排除し、且つローラー 11の矢印 b方向への回転に伴うベルト 12に対す る張力の作用を排除し得るように移動が制御されている。そして、ローラー 11、 12が 矢印 a方向に回転したとき、素材 Aを曲げ加工し、矢印 b方向に回転したとき、曲げ加 ェした素材 Aを排出し得るように構成されている。
[0049] 図 2に示すように、ベルト 12のローラー 11に対向する面には離隔手段を構成する 帯状の離隔部材 21がー対配置されている。離隔部材 21の厚さは、少なくとも針先に かけて太みが小さくなつて!/、る素材 Aの最大太み以下に設定される。それぞれの離 隔部材 21は、ベルト 12の幅方向の端部に長手方向に沿って貼着されており、これら の離隔部材 21の間に素材 Aを揷入する空間 22が構成されている。
[0050] 次に、本実施例に係る素材 Aに対する曲げ加工方法を実施する手順について説 明する。素材 Aに対する曲げ加工を実施する以前の状態では、ベルト 12はローラー
11に対し離隔部材 21の厚さ分だけ離隔して巻き付いている。即ち、ベルト 12は直接 ローラー 11に巻き付くことはなぐベルト 12と一対の離隔部材 21とローラー 11の加工 面 11 aとによって空間 22が構成される。
[0051] 素材 Aの平面 4をローラー 11の加工面 11a側に向けて針先 2を空間 22に揷入する 。このとき揷入された針先 2は空間内では自由な状態を保持し、ベルト 12による押圧 を受けることはない。従って、針先 2を含み離隔部材 21の厚さよりも小さい太みを持つ た部分は、加工面 11aに圧接することはなく該加工面 11aに拘束されることがない非 拘束部として構成される。また、素材の非拘束部分以外の部分は、ベルト 11とローラ 一 12とによって拘束され、ローラー 12の加工面に沿った曲げ加工がなされた湾曲部 となる。ベルト 11やローラー 12の弾性を考えないとすると、針先にかけて太みが小さ くなつている素材 Aの、離隔部材 21と同じ厚みを有する部分がこれら非拘束部と湾 曲部との境界部となる。
[0052] 上記状態からローラー 11、付勢ローラー 13を矢印 a方向に回転させると、この回転 に伴って素材 Aが同じ方向に進行してゆき、これに伴って素材 Aの針先部 3に於ける 離隔部材 21の厚さよりも大きい太みを持った部分が空間 22に入り込む。このため、 離隔部材 21の厚さよりも太みの大きい針先部 3の部位は、ローラー 11と付勢ローラ 一 13に付勢されたべノレト 12に挟まれることとなり、平面 4がローラー 11の加工面 11a に接触し峰 5がベルト 12を介して付勢ローラー 13に付勢されることで、平面 4と加工 面 11 aとの接触面を基準として曲げ加工がなされる。
[0053] 針先部 3に対する曲げ加工の進行に伴って、曲がりの起点 (針先部 3に於ける離隔 部材 21の厚さと略等しい太みを有する部位)として針先 2側は直針状を保持すること となり、この結果、針先 2は空間 22の内部をベルト 12方向に移動する。この移動は針 先部 3に於ける離隔部材 21の厚さよりも大きい太みを持った部分に曲がりが生じるこ とに伴うものであり、ローラー 11或いはベルト 12から強制されるものではない。
[0054] 針先 2或いはその近傍がベルト 12に接触したとき、該接触部位に於けるベルト 12 は付勢ローラー 13によるローラー 11方向への付勢を受けることがなぐテンションプ ーリ 16によって付与された張力とベルト 12自体が有する剛性に応じた力が針先 2或 いはその近傍に作用する。前記力は針先部 3から胴部 1に対する曲げ加工の進行に
応じて変化し、且つローラー 11の外径寸法や素材 Aの材料等の条件に応じて変化 する。
[0055] 従って、素材 Aの針先 2を含む先端側 (針先 2から離隔部材 21の厚さよりも小さい 太みを持った針先部 3の部分)は、ベルト 12によって僅かに曲げられる力、、ほとんど 曲げが生じることはない。
[0056] ローラー 11及び付勢ローラー 13の引き続く矢印 a方向への回転に伴って、素材 A の胴部 1に対する曲げ加工が進行する。このときの曲げ加工はローラー 11の加工面 11aに拘束されるものであり、湾曲部として構成される。そして矢印 a方向に所定角度 回転したとき、素材 Aに対する曲げ加工が終了する。その後、ローラー 11及び付勢口 一ラー 13を矢印 b方向に回転させると、この回転に伴って曲げ加工が施されて湾曲 した縫合針 Bが排出される。
[0057] ローラー 11、ベルト 12の間から排出された縫合針 Bは、図 1 (a)に示すように、スプ リングバックにより湾曲形状が多少変化するものの、針先部 3に於ける離隔部材 21の 厚さよりも大き!/、太みを持った部分から胴部 1にかけてローラー 11の加工面 1 laに対 応した湾曲形状を有している。
[0058] そして、針先 2を含み離隔部材 21の厚さよりも小さい太みを持った部分は、ベルト 1 2による曲げを受けて僅かに曲力 Sりを生じる力、、或いはローラー 11の加工面 11aに拘 束されることなく略直針状を保持している。このため、針先 2は湾曲した胴部 1の軸心 laの延長線に接近した位置を保持する。
[0059] 特に、離隔部材 21の厚さを素材 Aに於ける胴部 1の軸心 laの寸法と略同じ値に設 定した場合には、針先 2の位置を略軸心 laの延長線と略一致させることが可能となる 。なお、本実施形態では離隔部材 21は一対を設けてその間の空間 22で素材 Aをカロ ェしたが、もちろん、 3つ以上の離隔部材 21を設けて複数の空間を作り、複数の素 材 Aを同時に加工することができる構造としてもよい。
産業上の利用可能性
[0060] 本発明に係る曲げ加工方法は、胴部から針先にかけて太みが小さくなる縫合針を 、ローラーの加工面を基準とした湾曲形状ではなぐ軸心を基準とした湾曲に近似さ せることが可能である。このため、断面形状や針先部の形状の如何に関わらす、縫合
針の曲げ加工に利用して有利である。