明 細 帯板材の曲げ加工装置 技術分野
本発明は、 トムソン刃木型に用いられる帯刃などの鋼板製の帯板材を曲げ加工す るときに用いられる帯板材の曲げ加工装置に関する。 背景技術
従来より、 帯板材の曲げ加工装置として、 帯板材が揷通されるス リ ッ トを備えた 固定型と、 上記スリ ッ 卜を通して突き出された帯板材を可動型によってスリ ッ トの 出口コーナ部に押し付けて一定角度だけ一方向に折り曲げるようにしたものが知ら れている。
ところで、 本願発明者は、 可動型を円弧状に移動させることにより可動型の一回 の押付動作で帯板材を直角よりも大きい角度に曲げることができ、 しかも帯板材を 左右 2方向に折り曲げることのできる曲げ加工装置を開発した。
第 8図に本願発明者が開発した上記の曲げ加工装置に採用されている固定型と可 動型とを示してある。 同図において、 固定型は符号 1で、 可動型は符号 2で示して ある。 固定型 1は軸体 3の軸方向中間部に一体に具備されていて、 その固定型 1は 帯板材.(不図示) が揷通されるスリ ッ ト 1 1を備えている。 可動型 2は、 押付型部 2 1, 2 1を備えた一対の円弧状部材 2 a , 2 aでなり、 これらの円弧状部材 2 a , 2 aが上記固定型 1を挾む両側に配備されるようになっている。 そして、 帯板材 の曲げ加工に際しては、 一対の円弧状部材 2 a , 2 aでなる上記可動型 2を上記軸 体 3の回りで正方向または逆方向に所定角度だけ回転させて固定型 1のスリ ッ ト 1 1から突き出された帯板材を可動型 2の片側の押付型部 2 1によってスリ ッ ト 1 1 の出口コーナ部 1 1 aまたは 1 1 bに押し付けて帯板材を一定角度だけ所定の方向 に折り曲げるようになつている。
ところで、 この種の曲げ加工装置において、 可動型 2を構成している一対の円弧 状部材 2 a , 2 aの押付型部 2 1 , 2 1の平行度を高精度に設定しておく ことは曲 げ加工精度を高める上で不可欠である。 また、 帯板材、 特に冒頭に記載した帯刃な どを曲げ加工するときには、 帯刃の厚みが少しでも厚くなるとその折り曲げに要す る力が極端に大きくなるという事実があり、 そのような大きな曲げ力が必要とされ るときでも一対の円弧状部材 2 a , 2 aでなる可動型 2をねじれを生じさせず、 す なわち押付型部 2 1, 2 1の平行度を損なわずに所定角度に亘つて回転させ得るよ うにすることが必要である。
そこで、 本願発明者が開発した上記の曲げ加工装置においては、 剛体 (不図示) により一対の円弧状部材 2 a , 2 aをその相対位置が変わらないように固定して押 付型部 2 1 , 2 1の平行度を高精度に保持しておき、 しかもそのようにして剛体に 固定した一対の円弧状部材 2 a , 2 aの上端部と他端部との両方に回転力を伝達し て帯板材の押付け時にも可動型 2がねじれることなく所定角度に亘つて回転するよ うにしていた。
また、 上記の曲げ加工装置においては、 可動型 2を形成している一対の円弧状部 材 2 a, 2 aの上端部と他端部との両方に回転力を伝達するために、 1つの駆動源 (開発当初はパルスモータを用いた) に連結された歯車群でなる回転伝達機構を 2 つの経路に分けて一対の円弧状部材 2 a , 2 aの上端部と他端部とにそれぞれ連結 していた。 ところが、 そのようにすると、 2つの経路に分かれた回転伝達機構の歯 車群を固定型 1を具備する軸体 3の周囲に複雑な構成で配置することを余儀なく さ れるために、 軸体 3を取り外す必要が生じたときには、 軸体 3の取外しに先立って 回転伝達機構を構成している歯車群を取り外したり可動型 2を取り外したりしなけ ればならず、 軸体 3の取外しに多くの労力と時間を費やさざるを得なくなるという 不都合のあることが知見された。 また、 一旦軸体 3を取り外してしまうと、 再度そ れを組み立てるときに可動型 2における押付型部 2 1 , 2 1の平行度の調整などの 困難な作業をユーザー側に強いることになるといった不合理な点が知見された。 ところで、 固定型 1におけるスリ ッ ト 1 1の開口幅は曲げ加工の行われる帯板材
の厚みに応じた寸法であることが要求され、 厚みの異なる帯板材に対しては開口幅 の異なるスリ ッ ト 1 1を備えた固定型 1を用いることが要求される。 ところが、 本 願発明者が先に開発した上記の曲げ加工装置においては、 上述したように可動型 2 や歯車群や固定型 1を備えた軸体 3などの取外しや組立てなどの困難な作業をユー ザ一側に強いるほかなかったので、 異なる厚みの帯板材を曲げ加工するに際して既 設の軸体 3だけを取り外し、 それを、 帯板材の厚みに応じた開口幅のスリ ッ ト 1 1 を備える固定型 1を具備する別の軸体 3に交換するという簡易で経済的な方法を行 うことができなかった。
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、 新規な構成の可動型を採用す ることによって、 その可動型の軸方向一端部だけに回転伝達機構を連結しておくだ けでも曲げ加工中に可動型の相対向する一対の押付型部の平行度が損なわれること がないようにすると共に、 可動型の軸方向一端部だけに回転伝達機構を連結してお く ことができるようにすることによって、 回転伝達機構の歯車群や可動型を分解せ ずに固定型を一体に具備する軸体だけをユーザー側においても容易に交換すること のできる帯板材の曲げ加工装置を提供することを目的とする。 発明の開示
上記目的を達成するため、 本発明による帯板材の曲げ加工装置は、 帯板材が揷通 されるスリ ッ トを備えた固定型と、 上記スリ ッ トに揷通された帯板材の送りが停止 されているときに所定量だけ移動される可動型とを備え、 可動型により上記スリ ッ トに揷通された帯板材をそのスリ ッ 卜の出口コーナ部に押し付けて一定角度だけ折 り曲げるようになされた帯板材の曲げ加工装置において、 上記固定型が軸体の軸方 向中間部に一体に具備され、 この軸体の下端部が取付部材を介して機台側に取付ボ ルトにより固定され、 上記可動型が、 周方向の所定個所に周方向で対向する一対の 押付型部を有しかつその押付型部の反対側部位に帯板材の導入用開口を有する円筒 状に形成されており、 この円筒状の可動型が上記軸体に回転自在に外嵌されて上記 固定型に対応されていると共に、 この可動型の軸方向一端側に、 可動型に回転力を
レ 伝達する回転伝達機構が連結されているものである。
この構成によれば、 一対の押付型部が設けられている可動型が円筒状に形成され ているので、 一対の押付型部の平行度が損なわれるおそれはない。 また、 可動型に はその一端部だけに回転伝達機構が連結されているので、 固定型すなわち固定型を 具備する軸体を取り外すときには、 取付部材を機台に取り付けている取付ボルトを 外して取付部材と共に軸体を取り外すことができる。 そして、 軸体を取り外す必要 が生じたときには、 それに先立って回転伝達機構の歯車群を取り外したり可動型を 取り外したりする必要がなく、 軸体だけを取り外してその軸体に具備されている固 定型を交換することが可能である。 そして、 固定型の交換後においても、 上記押付 型部の平行度の調整などを行う必要がない。
上記の曲げ加工装置において、 軸体の下端部に設けた下窄まり部と取付部材側に 開設した上拡がり状の取付孔部とを嵌合し、 下窄まり部と取付孔部とのそれぞれに 設けたキー溝にキーを嵌着するようにすれば、 軸体に具備されている固定型のスリ ッ トと可動型の押付型部との位置関係を容易に正確に設定することができる。 また、 取付部材の下面にスぺ一サを重ね、 このスぺーサの孔部を通して上記軸体 の下端部に設けられたねじ孔に締付けボル卜をねじ込むことによつて軸体の下窄ま り部を取付部材の上拡がり状の取付孔部に締付け固定するようにすると、 軸体と取 付部材とが強固に固定される。
本発明において、 その他の数ある特徴は以下の説明において明らかにされる。 図面の簡単な説明
第 1図は本発明の実施例による曲げ加工装置の概略外観図である。
第 2図は上記曲げ加工装置の一部破断側面図である。
第 3図は図 2の要部拡大断面図である。
第 4図は減速機構の説明図である。
第 5図は固定型を具備する軸体と可動型とを示す分解斜視図である。
第 6図は非作動状態での作用説明図である。
第 7図は作動状態での作用説明図である。
第 8図は比較例としての曲げ加工装置に用いられている固定型を具備する軸体と 可動型とを示す分解斜視図である。 発明を実施するための最良の形態
第 1図および第 2図に示した曲げ加工装置 Aにおいて、 4は機台であり、 この機 台 4に前部ハウジング 4 1 と側部ハウジング 4 2が取り付けられ、 これらのハウジ ング 4 1 , 4 2に上板 4 3が取り付けられている。 機台 4の前部に後述する可動型 2の駆動源としての電動機 5が設置されている。
電動機 5にはサーボモータが用いられている。 電動機 5として用いられているサ —ボモータは、 その軸線と同心状の上下に貫通する孔部 (不図示) を有し、 かつそ の電動機 5のロータ (不図示) に第 4図に説明的に示した構成を有する減速機構 6 を介して可動型 2が連結される。 すなわち、 第 4図の減速機構 6は、 入力側回転体 6 1に設けられた内歯 6 2に、 楕円形の出力側回転体 6 3を多数のボール 6 6を介 し嵌合して楕円形に撓められたフレキシブル筒体 6 4の外歯 6 5の一部を嚙み合わ せた基本的構成を有しており、 上記入力側回転体 6 1に電動機 5のロータが連結さ れ、 出力側回転体 6 1に可動型 2が連結される。 また、 出力側回転体 6 1 の中心に は電動機 5の上記孔部につながる孔部 6 7が設けられている。
第 5図のように、 固定型 1は軸体 3の上端部に近い軸方向中間部に一体に設けら れている。 第 6図および第 7図に示すように、 固定型 1には帯板材 1 0 0の厚みに 応じた開口幅のスリ ッ ト 1 1が設けられている。 また、 軸体 3の下端部に下窄まり 部 3 1が設けられており、 この下窄まり部 3 1にキー溝 3 2が具備されている。 他 方、 可動型 2は、 周方向の所定個所に周方向で対向する一対の押付型部 2 1 . 2 1 を有しかつその押付型部 2 1 . 2 1の反対側部位に上記帯板材 1 0 0の導入用開口 2 2を有する円筒状に形成されている。
第 2図のように、 可動型 2はその下端部に 1つ割形状の取付用部材 7が締付け固 定されており、 この取付用部材 7のフランジ部 7 1が取付ねじ 7 2を用いて上記減
速機構 6の出力側回転体 6 3に同心状に固定されている。
他方、 上記軸体 3はその下端部の下窄まり部 3 1力、 取付部材 8に設けられてい る上拡がり状の取付孔部 8 1に嵌合されていると共に、 その嵌合個所においては、 第 3図に示したように、 下窄まり部 3 1のキー溝 3 2と取付孔部 8 1に設けられた キー溝 8 2とにキー 8 3が嵌着されている。 また、 取付部材 8の下面にスぺーサ 8 4が重ねられ、 このスぺーサ 8 4の孔部 8 4 aにおいてその下面にヮッシャ 8 7が 重ねられ、 ヮッシャ 8 7に挿通した締付けボルト 8 6が上記軸体 3の下端部に設け られたねじ孔 3 3にねじ込まれている。 そして、 締付けボルト 8 6の頭部 8 6 aが ヮッシャ 8 7に重なつた状態で、 この締付けボルト 8 6により軸体 3の下窄まり部 3 1が取付部材 8の上拡がり状の取付孔部 8 1に締付け固定されている。
取付部材 8は取付フランジ 8 8を備えている。 取付部材 8に取り付けられた軸体 3は、 機台 4の下方から機台 4に開設された開口 4 4を通して電動機 5の孔部 (不 図示) および減速機構 6の孔部 6 7、 さらには可動型 2の内部に揷通される。 また 、 取付部材 8が機台 4の上記開口 4. 4に嵌合され、 この取付部材 8の取付フランジ 8 8が機台 4の下面に重ねられている。 そして、 取付フランジ 8 8のボルト挿通孔 8 aと取付部材 8の下面に重ねられたスぺーサ 8 4のボルト揷通孔 8 4 aに挿通し た取付ボルト 8 5を機台 4側のねじ孔 4 5に下方からねじ込むことによって、 その 取付部材 8を機台 4に固定してある。
次に、 上記上板 4 3に支持体 4 6を介して取付板 4 7が取り付けられている。 こ の取付板 4 7に第 2図のように電動機 9が設置され、 この電動機 9の回転軸 9 1に 送りローラ 9 2 , 9 3のいずれか一方が連動されている (第 6図および第 7図参照 以上の構成において、 固定型 1のスリ ッ ト 1 1 と可動型 2の一対の押付型部 2 1 とは、 第 6図に示す非作動状態において正確に位置決めされていることが望ましい 。 この点に関し、 上記の曲げ加工装置 Aにおいては、 固定型 1が軸体 3に一体に具 備されており、 その軸体 3の下窄まり部 3 1が取付部材 8の上拡がり状の取付孔部 8 1に嵌合していることによって軸体 3が取付部材 8に対して垂直に立ち上げられ
てしかも心合わせされており、 キー 8 3によって軸体 3が周方向で正確に位置決め されていることにより、 固定型 1のスリ ッ ト 1 1 と可動型 2の一対の押付型部 2 1 とは特別な調整作業を行わずに高精度に正確に位置決めされる。
第 6図は曲げ加工時における固定型 1に対する可動型 2の非作動状態を示してい る。 帯板材 1 0 0は第 2図のように上板 4 3と取付板 4 7との間を通して後方から 送りローラ 9 2 , 9 3の間に給送され、 電動機 9の駆動に伴う送りローラ 9 2 , 9 3の間欠回転によって固定型 1のスリ ッ ト 1 1を通して前方に間欠的に送り出され る。 そして、 可動型 2は帯板材 1 0 0の送りが停止しているときに所定量だけ正方 向または逆方向に回転される。 第 7図は可動型 2が所定量だけ正方向 Xに回転して いる状態を示しており、 この図のように可動型 2が正方向に所定量回転すると、 帯 板材 1 0 0が可動型 2の左側の押付型部 2 1によりスリ ッ ト 1 1の右側の出口コー ナ部 1 1 bに押し付けられて右側に向けて折り曲げられる。 図示していないけれど も、 可動型 2が非作動状態から逆方向に所定量回転すると、 帯板材 1 0 0が可動型 2の右側の押付型部 2 1によりスリ ッ ト 1 1の左側の出口コーナ部 1 1 aに押し付 けられて左側に向けて折り曲げられる。 帯板材 1 0 0の曲がり角度は可動型 2の回 転角度に応じたものになる。
以上説明した曲げ加工装置 Aにおいて、 厚みの異なる帯板材 1 0 0の曲げ加工を 行うために、 既設の軸体 3を、 開口幅の異なるスリ ッ ト 1 1を備えた固定型 1を具 備する軸体 3と交換したいときには、 取付部材 8を機台 4に固定している複数本 ( たとえば 6本) の取付ボルト 8 5…を取り外した後、 取付部材 8ゃスぺーサ 8 4な どと共に軸体 3を機台 4の下方に引き抜いて撤去し、 その後に、 取付部材 8ゃスぺ ーサ 8 4などを取り付けた交換用の軸体 3を機台 4の下方から機台 4の開口 4 4を 通して電動機 5の孔部 (不図示) 、 減速機構 6の孔部 6 7、 可動型 2の内部にそれ ぞれ挿通し、 取付ボルト 8 5…を用いて機台 4に取付部材 8を固定すればよい。 な お、 取付部材 8ゃスぺーサ 8 4などは交換用の軸体 3に付け替えることができる。 このような軸体 3の交換作業はユーザー側においても容易に行うことができる作業 であり、 その際に可動型 2の押付型部 2 1 , 2 1 の平行度を改めて調整したりする
必要はない。
上記のように固定型 1を一体に具備する軸体 3をユーザー側においても容易に交 換することができるようになった理由は、 可動型 2を円筒状に形成することによつ て、 その押付型部 2 1 , 2 1の平行度を調節することの必要性をまったく無くする と同時に、 可動型 2に対する回転力の伝達を可動型 2の一端部だけに伝えれば可動 型 2にねじれを生じさせずに曲げ加工を行えるようにして、 電動機 5の回転を、 減 速機構 6によって形成される回転伝達機構を経て可動型 2の一端部だけに伝達する ようにしたためである。 産業上の利用可能性
以上のように、 本発明による帯板材の曲げ加工装置は、 可動型を円筒状に形成す ることによって、 曲げ加工時における可動型のねじれを防ぎ、 同時に可動型にその —端側からだけ回転を伝達すればよいようにしてあるので、 軸体に一体に具備され た固定型の交換を、 可動型の押付型部の平行度の調整などの困難の作業や歯車群の 分解を伴わずに容易に行うことができる。 そのため、 ユーザー側でも固定型の交換 を容易に行えるようになる。 本発明による帯板材の曲げ加工装置は、 帯刃の曲げ加 ェにとどまらず、 他の種類の帯板材の曲げ加工にも同様に適用することができる。